内々定の取り消しを訴えられた事例(平23・3・10 福岡高判)

事案の概要

1. 不動産売買会社Yから採用の内々定を受けていたが、予定されていた採用内定通知書授与の日の直前に取り消された就活者Xが、取消しは始期付解約権留保付労働契約に反するとして損害賠償と慰謝料等の支払を求めたもの。
2.福岡地裁は、当該労働契約が確実に締結されるであろうとのXの期待は法的保護に値する程度に高まっており、内々定の取消しは、信義則に反し、不法行為にあたるとして損害賠償を認めた。
3. Yが控訴・Xも付帯控訴した福岡高裁は、期待権侵害などは認めたものの、当該労働契約が成立していたわけではなく、内定と同様の精神的損害が生じたとはいえないとして不法行為は認めず、慰謝料のみ認容した。

 

判決の骨子

その1

福岡地裁:

ⅰ)始期付解約権留保付労働契約が成立していたとは言えないこと、
ⅱ)採用内定通知書授与の日のわずか数日前に至った段階では、労働契約が確実に締結されるであろうとのXの期待は法的保護に値する程度に高まっていたこと、
ⅲ)Yは内々定取消しに誠実に対応したとは言えないこと、等からすると、
ⅳ)労働契約を締結する過程における信義則に反し不法行為を構成する(損害賠償を認めその余を棄却)。

その2

福岡高裁:

ⅰ)期待権などを侵害しているが、
ⅱ)内々定後の経過からすると始期付解約権留保付労働契約が成立したとは言えないから、内定の場合と同様の精神的損害が生じたとすることはできない、
ⅲ)信義則に反した不法行為による慰謝料の請求には理由がある(労働契約に反した不法行為による損害賠償は認容しなかった)。

引用/厚生労働省サイト

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