1.営業不振のため休業したY社の従業員Xは、休業中も賃金を支払うとの約束が一部しか履行されなかったことから、未払い賃金の支払いを求めてY社を提訴したところ、Y社はXの債務不履行による損害賠償とXの賃金債権との相殺を主張したもの。
2.大阪高裁はY社の主張を認めたが、最高裁は、相殺は賃金の全額払い原則に反し許されず、この点の審理が不十分であるとして、高裁判決を破棄差し戻した。
労働基準法24条1項は、賃金は原則としてその全額を支払わなければならない旨を規定しており、これによれば、賃金債権に対して損害賠償債権をもって相殺することは許されないと解される。
高裁判決が、賃金額を確定することなく、漫然とその全額について、Y社のXに対する損害賠償債権による相殺の意思表示を有効と認め、これによりXの賃金債権は消滅したものと判断したのは、法律の適用を誤った結果、審理不尽理由不備の違法を犯したものである。
引用/厚生労働省サイト