業務中に発症した病気が、過重業務による精神的、身体的な負荷によるものと認められた事案(平12・07・17最一小判)

事案の概要

1.支店長付運転手X(発症時54歳)は、業務中に発症したくも膜下出血について、発症前に従事した業務の負荷により発症したとして、労災保険法上の休業補償を請求したが、不支給処分となったため、その取消を求めて提訴したもの。

2.横浜地裁はXの請求を認容、東京高裁は請求を棄却したが、最高裁は、請求を認容した。

 

判決の骨子

その1

Xの業務は、業務の性質からして精神的緊張を伴うものであった上、不規則なものであり、その時間は早朝から深夜に及ぶ場合があって拘束時間が極めて長く、また、待機時間の存在を考慮しても、その労働密度は決して低くはないというべきである。

その2

とりわけ発症の約半年前の昭和58年12月以降の勤務は精神的、身体的にかなりの負担となり、慢性的な疲労をもたらしたことは否定し難い。加えて、発症の前日から当日の業務は、それまでの長期間にわたる過重な業務負担の継続と相まって、Xにかなりの精神的、身体的負荷を与えたものとみるべきである。

その3

Xの基礎疾患の内容、程度、Xが発症前に従事していた業務の内容、態様、遂行状況等に加えて、脳動脈りゅうの血管病変は慢性の高血圧症、動脈硬化により増悪するものと考えられており、慢性の疲労や過度のストレスの持続が慢性の高血圧症、動脈硬化の原因の一つになり得るものであることを併せ考えれば、Xの基礎疾患が発症当時その自然の経過によって一過性の血圧上昇があれば直ちに破裂を来す程度にまで増悪していたとみることは困難というべきであり、他に確たる増悪原因を見いだせない本件においては、Xが発症前に従事した業務による過重な精神的、身体的負荷がXの基礎疾患をその自然の経過を超えて増悪させ、発症に至ったものとみるのが相当。

引用/厚生労働省サイト

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