就業規則(退職金規程)の不利益変更の有効性が争われた事案(昭63・02・16最三小判)

事案の概要

1.合併後の農協Yにおいて新たに作成・適用された就業規則上の退職給与規程が、合併前の農協の従前の退職給与規程より不利益なものとなったことから、合併前より勤続していた退職労働者Xらが従前の退職金との差額を請求したもの。

2.本件就業規則変更の効力について、秋田地裁大曲支部においては合理性を認めたが、仙台高裁秋田支部においてはこれを認めなかった。最高裁は、就業規則の変更は有効として、Xらの請求を認めなかった。

 

判決の骨子

その1

新たな就業規則の作成又は変更によって、既得の権利を奪い、労働者に不利益な労働条件を一方的に課すことは、原則として許されないが、当該規則条項が合理的なものである限り、個々の労働者において、これに同意しないことを理由として、その適用を拒むことは許されない。

その2

当該規則条項が合理的なものであるとは、当該就業規則の作成又は変更が、その必要性及び内容の両面からみて、それによって労働者が被ることになる不利益の程度を考慮しても、なお当該労使関係における当該条項の法的規範性を是認できるだけの合理性を有するものであることをいう。特に、賃金、退職金など労働者にとって重要な権利、労働条件に関し実質的な不利益を及ぼす就業規則の作成又は変更については、当該条項が、そのような不利益を従業員に法的に受忍させることを許容することができるだけの高度の必要性に基づいた合理的な内容のものである場合において、その効力を生ずる。

その3

新規程への変更によってXらが被った不利益の程度、変更の必要性の高さ、その内容、及び関連するその他の労働条件の改善状況に照らすと、本件における新規程への変更は、それによってXらが被った不利益を考慮しても、なおY組合の労使関係においてその法的規範性を是認できるだけの合理性を有し、Xらに対しても効力を生ずる。

引用/厚生労働省サイト

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