年次有給休暇の基礎知識

年次有給休暇とは

年次有給休暇は、雇用主から付与される「賃金が支払われる休暇」であり、労働者の心身のリフレッシュを目的としています。毎年一定の日数が割り当てられ、有給休暇、年次休暇、年休、有休とも呼ばれています。

 

年次有給休暇付与の対象条件

・雇用開始から6ヵ月間継続して雇用されていること。

・その6ヵ月間の労働日のうち、少なくとも8割以上に出勤していること。

 

上記の2つの条件を満たしていれば、年次有給休暇を取得することができます。この制度は、契約社員やパートタイマーなどの有期契約労働者だけでなく、管理職にも適用されます。

 

令和4年就労条件総合調査の結果によると、労働者一人平均年次有給休暇取得率の年次水位は58.3%と過去最高の数字になっています。

2019年4月以降、企業に年10日以上の有給休暇が与えられる労働者に対して、年間5日以上の有給休暇を取得させることが法的に義務づけられたことも取得率の上昇につながっています。

 

 

引用/厚生労働省「令和4年就労条件総合調査

 

年次有給休暇の付与日数

有給休暇は、雇用開始日から6ヶ月間働き続け、かつ労働日の80%以上出勤した従業員には、10日間の有給休暇を与えなければなりません。

また、この従業員とは正社員に限定されず、契約社員やパートタイム、アルバイトの従業員も含まれます。所定労働時間や日数、勤続年数に応じて比例して有給休暇を付与する必要があります。

 

週所定労働日数が5日以上の者または週所定労働時間が30時間以上の者

 

週所定労働日数が4日以下もしくは1年間の所定労働日数が216日以下の者

 

有給休暇の基準日

年次有給休暇は、通常、労働者が雇用されてから6ヵ月が経過し、労働日の8割以上出勤した場合に付与されます。その後は、毎年、勤続年数に応じた日数が追加で付与されることになります。

例えば、1月1日入社の従業員は、有給休暇の最初の付与日は6か月後の7月1日になります。8割以上出勤していれば、有給休暇が付与されます。

この場合、8割以上出勤しなかったとしても、有給休暇は付与されませんが、出勤率が8割未満の年でも、その年は勤続年数に含まれるため、有給休暇の日数を計算する際には注意が必要です。例えば、勤続年数が1年6ヵ月の年に出勤率が8割未満で、有給休暇が11日分付与されなかった場合でも、翌年に出勤率が8割以上であれば、勤続年数は2年6ヵ月とみなされ、新たに12日分の有給休暇が付与されます。

しかし、必ずしもこの原則に厳密に従わなければならないわけではありません。

手続きの煩雑さを避けるために、労働者に不利益が生じない範囲で、ある時期に一斉に有給休暇を付与することも可能です。

 

有給休暇の有効期限

有給休暇の有効期限は2年です。有給休暇は2年経過すると失効してしまいます。

有給休暇の有効期限に関する規定は労働基準法の39条に明記されており、また115条では、この法律に基づく請求権は2年で時効が成立することが規定されています。

 

有給休暇の付与単位

有給休暇は原則として1日単位で付与されますが、労使協定によっては時間単位での付与が可能です。また、労働者が希望し合意すれば、労使協定が締結されていなくても半日単位での付与が可能な場合もあります。

時間単位での付与が可能な年次有給休暇は、1年につき最大5日までです。

時間単位での付与は、労働者の事情に合わせて年次有給休暇を柔軟に取得できるようにするために設けられたものですが、労働者のリフレッシュのために原則としては1日単位での取得をしてもらいたいとの考えから取得に制限があります。

 

有給休暇の基準日とは

有給休暇の基準日とは、雇用主が有給休暇を従業員に付与する権利発生日です。

基準日は原則として、入社日から6カ月後の日になります。

例えば、5月1日に入社した場合、基準日は11月1日となります。

基準日に到達すると、雇用主は従業員に対して有給休暇を付与する義務が生じます。

労働者の入社日が異なれば、有給休暇が発生する基準日も異なることになりますので、有給休暇の管理が非常に煩雑になる可能性があります。

そこで、一定の条件の下この基準日を統一し、一斉に付与することが認められています。

 

取得の義務化

2019年4月以降、事業主は従業員に対して、年間最低5日の有給休暇を取得させる義務を負うようになりました。

この背景には、「有給休暇を持っていても、周囲に気を使って取得しない労働者が多い」という問題があります。年5日の有給休暇取得義務の対象者は、10日以上の有給休暇が与えられる労働者です。これには、有期雇用労働者や管理監督者などの定められた期間で雇用される人々も含まれます。