安全配慮義務とは、労働者が安全で健康に働けるように雇用者に課せられた義務です。労働契約法第5条に定められており、使用者は、従業員が安全で健康に働けるよう、必要な配慮をしなければなりません。安全配慮義務は、従業員の労働災害の防止に努める義務であり、従業員の「働きやすさ」を実現するための最低限の配慮と言えます。労働安全衛生法第3条第1項にも、事業者は労働者の安全と健康を確保するために必要な措置を取るよう定められています。
安全配慮義務の範囲は、使用者が雇用するすべての従業員に適用されます。また、直接的な労働契約を結んでいない従業員でも、同じ環境で働く従業員であれば範囲に含まれます。自社の従業員だけでなく、下請け企業の従業員、派遣社員、海外で業務を行う従業員も安全配慮義務の対象となります。
安全配慮義務を遵守するために、企業が行うべき具体的な対策は法律に定められていません。企業として、従業員が安全に働けるようにするためにどのような対策を講じる必要があるかを考え、具体的な対策を講じる必要があります。
対策は、作業環境と健康管理という2つの要因から考えていきます。
安全な労働環境を整えることが重要です。具体的な対策としては、機器のメンテナンスや設備の導入・メンテナンス、従業員に対する機械の操作方法の指示・指導などが挙げられます。作業環境の整備は、従業員が安全かつ効率的に仕事を行うことができるようになるため、企業にとってもメリットがあります。
従業員の心身両面の健康面を企業が管理することも、安全配慮義務に必要な要素の一つです。従業員のストレスチェックの実施や、メンタルに関する社内相談窓口の設置や社内
カウンセラーの配備、パワハラ・セクハラ対策、健康診断の実施などが挙げられます。
安全配慮義務を違反した場合の罰則については、労働契約法には明記されていませんが、高額な賠償金を請求される可能性があります。
安全配慮義務違反により課される罰則の法的根拠として、以下の3つの民法が挙げられます。
・債務不履行(民法415条)
・不法行為(民法709条)
・使用者責任(民法715条)
これらの法律によって、労働中に問題が起こった場合には、事業者が労働者に対して損害賠償などの責任を負うことになります。つまり、安全配慮義務を果たさなかった企業は、違法行為によって労働者に損害を与えた場合、損害賠償を支払う可能性が出てきます。
企業が安全配慮義務を果たすために必要な対策は、法律で明確に規定されているわけではありません。従って、企業側は、従業員が安全に働けるようにするための具体的な施策を考慮し、実行することが必要です。
安全配慮義務を果たすための対策は、大きく分けて作業環境と健康管理の2つの要素から構成されます。
作業場所が安全であることが求められます。例えば、機器の点検・メンテナンス、設備の整備、従業員に対する機械操作方法の指導・教育などが挙げられます。
従業員の健康状態を企業側が管理することが求められます。健康管理は、身体的・精神的な健康の両面を含みます。健康診断の実施、過重労働の防止、メンタルヘルスのチェック・改善などが挙げられます。
労働災害や事故が起こると、企業には損害賠償責任が生じるだけでなく、社会的な信頼を失うリスクもあります。安全配慮が徹底された職場では、事故や災害の発生リスクが低下し、法的リスクも低減するとともに、社会的信頼度も向上します。
安全配慮が徹底された職場では、労働者の安心感が向上します。労働者が不安やストレスを感じることがなく、快適な職場環境で働けるため、生産性が向上することが期待できます。
企業が従業員の健康面に配慮することで、労働者が健康状態を維持できるようになります。健康な労働者は長期的な就労が可能であり、生産性の向上につながります。
企業が安全配慮によって事故や災害を未然に防止し、社会的な信頼を得ることで、顧客や取引先からの信頼度が向上します。その結果、新たなビジネスチャンスが生まれる可能性が高くなります。
企業が安全配慮を徹底することで、社会的責任を果たすことができます。そのため、企業のブランドイメージが向上し、社会からの信頼を得ることができます。