日本で働く外国人の雇用状況は、年々増加傾向にあります。
外国人技能実習制度や、特定技能ビザ制度などを利用して、日本で働く外国人労働者が増加しています。
一方外国人労働者の労働災害の発生状況も、日本人労働者に比べて高い傾向にあり、年々増加しています。
特に、建設業や飲食業などの危険な作業に従事している外国人労働者において、労災発生率が高い傾向にあります。
外国人労働者が労働災害に巻き込まれる原因としては、言語や文化の違いによるコミュニケーションの不足、安全衛生に関する教育や訓練の不足、不適切な労働環境などが挙げられます。
日本では、外国人労働者の安全衛生管理に関する取り組みが進められていますが、まだ課題が残されています。
安全衛生に関する情報提供や教育・訓練の充実、労働環境の改善など、外国人労働者が安心して働けるような環境づくりが求められています。
外国人労働者に対して、職場の安全衛生に関する教育を実施することが求められます。
具体的には、労働災害防止に関する指導や、使用する機械や原材料の危険性と有害性、取り扱い方法などの指導が含まれます。
その際には、外国人労働者が理解できる言語や視覚教材を用いるなど、十分に理解できるように配慮することが必要です。
外国人労働者にとって、日本での作業は文化や言語の壁があるため、日本人と同じ水準で安全衛生に関する知識を持っているとは限りません。そのため、外国人労働者へのわかりやすい安全衛生教育が求められます。
まず、言語の壁を乗り越えるために、多言語で提供される教育ツールを活用することが重要です。
厚生労働省では、外国人労働者に対して、適切な安全衛生教育を行うための視聴覚教材(動画・マンガ等)を作成しています。初めて学ぶ方でも理解しやすい内容となっており、業種・作業・危険有害要因と業種共通などの教材が用意されています。
教材は14言語(一部11言語)に対応しており、以下の言語が対象となっています。
英語、インドネシア語、中国語、ベトナム語、フィリピノ語、モンゴル語、タイ語、カンボジア語、ネパール語、ミャンマー語、スペイン語、ポルトガル語、韓国語
また、業種ごとに、以下のような教材もありますので用途に応じてご活用できます。
未熟練労働者は、作業に慣れておらず、危険を把握・察知する能力が身についていないため、中小規模事業場における雇用時や作業内容変更時などの安全衛生教育に役立ちます。
外国人労働者が技能講習時に専門的な用語を理解しやすいよう、技能講習別の補助教材があります。
学習と体験をセットにすることで、教育効果を高めることができます。仮想の作業場における各種危険作業の疑似体験などがあります。
文化の違いに対応するために、教育内容の配慮が必要です。外国人労働者の母国によっては、安全意識が日本とは異なる場合があるため、その点を踏まえた教育が求められます。例えば、作業前の安全確認や安全装置の使用など、日本では当たり前とされることでも、外国人労働者にとっては不慣れなことがあります。そのため、繰り返し丁寧に説明することが重要です。
ツールの上手な活用で、外国人労働者に対して効果的な安全衛生教育を実施し、安全かつ円滑な業務遂行を実現しましょう。
外国人労働者とのコミュニケーションにおいて、日本語が通じないことがあるため、緊急時に必要な「危ない」「逃げろ」などの言葉を最初にしっかりと教える必要があります。安全教育資料の作成には、写真やイラストなどを多用した形式が有効であり、説明時には禁止行為などを「×」で表記すると、誤解がなく伝わりやすくなります。
また、安全教育資料を作成したら、危険情報を共有し、他の部署の管理者にメールなどで情報を共有することが重要です。外国人労働者の日本語能力の向上には、普段からしっかりとコミュニケーションをとることが大切です。
以上のような方法を取り入れ、緊急時に備えるために、外国人労働者に対して適切な安全衛生教育を行いましょう。
職場や作業場所において、外国人労働者が正確に理解できるように、労災防止に関する標識や掲示について図解などを用いて表示することが求められます。
また、可能な限り、外国人労働者の母国語や理解できる言語を併記するなどの工夫が必要です。
外国人労働者に対して、定期的な健康診断や面接指導、心理的な負担の程度を把握するための検査を実施することが求められます。
実施に当たっては、外国人労働者の母国語や理解できる言語、簡単な日本語による説明が必要です。
また、結果に基づく事後措置の説明も同様に行う必要があります。
外国人労働者に対して、産業医や衛生管理者などを活用して、定期的な健康指導や健康相談を行うことが推奨されます。
外国人労働者の女性が妊娠中または出産後である場合には、労働法令に基づき、妊娠・出産に関する特別の休暇や労働時間の短縮などの措置が求められます。
また、妊娠中や出産後の健康管理に関する措置も必要です。
これらの措置を適切に実施し、母性保護を確保することが求められます。
さらに、授乳室の設置や、授乳時間の確保などの措置も必要です。
労働安全衛生法の周知については、まずは労働者が法令を理解できるよう、外国人労働者の母国語や理解できる言語、または簡単な日本語による説明を行うことが重要です。
さらに、具体的な安全衛生規定や手順についても、わかりやすく説明することが求められます。
具体的には、法令をまとめた要約資料を用意する、グラフィックスやビジュアルを活用する、説明用のビデオやオーディオ教材を用意するなど、多様な方法を用いて理解を促進することが重要です。また、定期的に法令に関する研修を行うことも、外国人労働者の労働安全衛生に対する理解を深める上で有効です。
外国人労働者を雇用する場合、コミュニケーション上の問題から作業の説明がうまく伝わらない場合があります。
そのため、作業内容や必要な用語をしっかりと教えることが必要です。
作業の説明は、OJT(On-the-Job Training)を通じて行うことが望ましいです。
具体的には、作業現場で実際に作業を行いながら、理解度を確認しながら説明する方法があります。
また、作業中に生じた疑問や不明点については、その場で解決するようにしましょう。
外国人労働者の母国によっては、日本とは異なる安全文化が存在する場合があります。
そのため、日本人労働者が当然だと思っている安全ルールが外国人労働者にとって当然ではないことがあるため、安全教育に力を入れる必要があります。
安全教育は、日頃から継続的に行い、安全意識を高めることが大切です。
作業の説明に際しては、現場で作業状況を確認しながら行うことが望ましいです。
さらに、「どのような危険があるか」に重点を置いて説明し、相手が正しく理解しているか確認することが大切です。
特にリスクが高い作業については、繰り返し丁寧に教えることが重要です。
以上のような点に注意しながら、外国人労働者に対して適切な作業の説明を行い、安全かつ円滑な業務遂行を実現しましょう。
引用/厚生労働省サイト